ワイヤー or マウスピース ?
マウスピース型矯正装置がアメリカで開発、実用化されてから今年で24年、日本に上陸してから18年が経過しました。
マウスピース型矯正装置に使用される素材も実用化当初からは大きく進歩し、治療技術も確立されてきています。
そういった背景から、最近では様々な会社がマウスピース型矯正装置のビジネスに参入してきています。
治療中に装置が目立たず、手軽に歯並びを整えられるイメージのマウスピース矯正は非常に魅力的ですよね。
しかし、いざ歯医者さんでマウスピース矯正をしたいと相談すると「あなたの場合はマウスピース矯正だと治療が難しい」と言われた方も多いのではないでしょうか?
この記事ではマウスピース矯正でできる治療と難しい治療の区別はどのように判断しているのかを紹介していますので、気になる方はご参考にしてください。
マウスピース矯正は使用する装置の素材の特性上、ワイヤー矯正と比較して歯の移動に制限があります。
逆に、その特性をうまく利用することで、非常に効率的に治療を行うことができます。
・マウスピース矯正に適したケース
1.すきっ歯(空隙歯列)
あごのサイズが大きかったり、歯のサイズが小さかったりといった要因で全体的に隙間が目立つような歯並びはマウスピース矯正が得意とするケースです。
マウスピース矯正は、歯を傾けて動かす治療を得意としています。
歯の隙間がある方の多くは歯が外側に傾いているケースが多く、その傾きを修正することで隙間を閉じることが可能ですので、マウスピース矯正が適しています。
2.軽度のガタガタ(軽度叢生)
マウスピース矯正では、歯並びの横幅を少し拡げることが可能です。
歯が並ぶためのスペースが5mm程度不足しているような軽度のガタガタの場合は歯並びを少し拡げながら整えてあげることでガタガタを綺麗に改善できます。
スペースが5mm以上不足しているようなケースでは、歯の側面を少し削って歯のサイズを小さくする治療などを併用することである程度は治療可能です。
ただ、スペースが10mm程度不足しているような重度のガタガタの場合、歯を削る治療を併用してもガタガタが治りきらないため、推奨されません。
3.矯正治療終了後のガタガタの再発
矯正治療を行った後、ガタガタが再発することがあります。
マウスピース矯正は、そういったガタガタの再発(後戻り)をもとに戻す治療に非常に適しています。
マウスピース矯正が普及するまでは歯並びの再治療をワイヤー矯正で行っていましたが、これは患者さんの立場からすると大きなストレスとなっていました。
そういったストレスを感じることなく歯並びの再治療を行えることはマウスピース矯正の大きなメリットです。
矯正治療を行った後にガタガタが再発する場合、歯の頭の位置は変わってしまっているのですが、歯の根っこの位置は大きく変わっていないことがほとんどです。
そういった場合、マウスピースで歯の頭の位置を少し修正することで非常に効率よく再治療を行うことができます。
上記のようなケースではマウスピース矯正が非常に有効な手段となります。
では逆にマウスピース矯正があまり有効ではないケースはどのようなものになるのか、紹介していきます。
・マウスピース矯正が適さないケース
1.歯を抜かなければならない重度のガタガタのケース
マウスピース矯正は「歯を傾けて動かす」治療が得意な反面、「歯の根っこを移動させる」治療は不得意です。
重度のガタガタを治療しなければならないケースでは歯の根っこをしっかりと移動させる必要があります。
そういったケースで歯の根っこを動かさずに歯の傾きだけで治療してしまうと、上で書いたようなガタガタの再発が起こってしまうリスクが非常に高くなるほか、噛み合わせがうまくいかなくなってしまう可能性もあります。
ガタガタの種類によってはマウスピース矯正でも治療可能なケースもありますが、重度のガタガタを改善するのであれば基本的にはワイヤー矯正がベストチョイスとなります。
どうしてもワイヤーをつける期間を短くしたい場合は、ガタガタがある程度治るまではワイヤーで治療を行い、治療の最終段階でマウスピース矯正に切り替えるのも良いでしょう。
2.歯が大きくねじれて生えている(捻転している)ケース
歯が少しだけ捻転しているケースであればマウスピース矯正でも十分治療可能なのですが、歯が大きく捻転しているケースではマウスピースだと治しきれない可能性があります。
また、歯が大きく捻転している状態を改善するためにはそれだけたくさんのスペースを作る必要があり、そういった治療を行うためには歯を大きく動かす必要があります。
マウスピース矯正ではワイヤーほど歯の移動に融通が利かないため、このようなケースではワイヤーに軍配が上がるでしょう。
3.外科手術を併用しなければならないケース
噛み合わせが悪い方の中には上あごと下あごの骨の位置関係が悪く、歯並びの改善だけでは噛み合わせが治せない方がいます。
そういったいわゆる「顎変形症」のケースでは矯正治療と外科手術を併用した治療が必要となります。
一般的な治療の流れとしては、「歯並びの治療 → 手術 → 歯並びの仕上げの治療」という順番で治療を行っていくのですが、手術を行った後、噛み合わせの位置関係がずれてしまわないように上下のあごをしっかりと固定する必要があります。
マウスピース矯正ではそういった固定が難しいため、このようなケースではワイヤー矯正を行わなければなりません。
以上のようにマウスピース矯正には有効なケースと有効ではないケースがあります。
もちろん、快適さや手軽さを考えると多少難しいケースでもマウスピース矯正で治療を受けたいというのが患者の皆様の希望だとは思うのですが、矯正治療を受ける上で最も大切なのは快適さや手軽さではなく、治療結果です。
何でもかんでもマウスピースで手軽にやってみようというのではなく、マウスピース矯正とワイヤー矯正のどちらが有効かをしっかりと考え、皆様の歯並びに適した治療法を選択できるようにドクターとよく相談するのが良いでしょう。
ご自身の歯並びにどの治療法が有効なのか気になる方はぜひ当院でご相談ください。
矯正歯科出身の院長が皆様の納得のいくまで説明いたします。